2017年03月09日

あの人気者、「カクレクマノミ」には不思議がいっぱい!

人気アニメ映画の主人公のモチーフになったことで知られる「カクレクマノミ」。
あざやかなオレンジ色のからだに、くっきりした3本の白い縞模様。そんなかわいい姿で、イソギンチャクの危険な触手のなかを、ゆらゆらくねくね、平気な顔をして泳いでいます。どうして、こんな暮らし方をしているのでしょうか?
カクレクマノミの不思議な生態を紹介します。

危険なイソギンチャクのそばで暮らすわけは?

世界にはクマノミの仲間が28種おり、日本の海では6種を見ることができます。これほど多くのクマノミが生息しているのは、実は世界でも日本のまわりだけ。日本の海はクマノミの楽園なのです。クマノミのなかには、本州の海でも見られるものがいますが、カクレクマノミは沖縄などのサンゴ礁の海に暮らしています。意外に浅いところにもいる場合があるので、シュノーケリング体験などで見ることができるかもしれません。
 
カクレクマノミをはじめとするクマノミの仲間は、イソギンチャクのすぐ近くで生活する珍しい魚です。多くの魚はイソギンチャクには決して近寄りません。イソギンチャクは頭上にのばした触手に毒を持っているからです。なかには、人間がさわってもミミズ腫れをおこすほど強い毒を持っているものもあります。
 

イソギンチャクの毒がなぜ効かないのか?

カクレクマノミはなぜ、危険なイソギンチャクといっしょに暮らすことができるのでしょうか。これは、クマノミのからだが特殊な粘液でおおわれていることにより、イソギンチャクの毒が効かないからだといわれています。ほかの魚にはない不思議な力を持っているわけです。
カクレクマノミは大きな魚が近づいてきたら、すぐに触手のなかに逃げ込みます。すると、「食べてやろう」と狙ってきた魚も、つかまえるのをあきらめるほかありません。カクレクマノミはイソギンチャクのすぐ近くを生活の場とすることにより、自分の身を守っているのです。
では、イソギンチャクのほうはどうでしょう。カクレクマノミといっしょに暮らして、何か得なことがあるのでしょうか。寄生虫をカクレクマノミに食べてもらっている、という説もありますが、実際にはまだはっきりわかってはいません。もしかしたら、ちゃっかりと、カクレクマノミだけが得をしている可能性もあります。

 

えっ!子どものころは、オスでもメスでもない!?

カクレクマノミをはじめとするクマノミの仲間には、ほかにもビックリするようなところがあります。それは、子どものころはオスでもメスでもなく、大きくなってから、オスやメスに変わることです。
 
カクレクマノミは多くの場合、ひとつのイソギンチャクのまわりに、数匹のグループで暮らしています。どれがオスで、どれがメスなのか、言い当てるのは割合簡単。いちばん大きいカクレクマノミがメスで、その次に大きいのがオスなのです。では、これらよりも小さな魚はどうかといえば、じつはまだオスでもメスでもありません。からだのなかに卵巣と精巣の両方を持っていて、まだどちらも成熟していないのです。
そのグループのなかで、もしメスが死んでしまえば、子孫を残すことができなくなってしまいます。この非常事態になると、なんとカクレクマノミは「変身」します。驚くべきことに、2番目に大きかったオスが、メスに性転換するのです。しかし、そうなると、グループ内にオスがいなくなってしまいます。そこで、3番目に大きかった魚の出番。グループ内のオス・メスのバランスを保つため、精巣のみが成熟してオスに成長します。
 
サンゴ礁の海や水族館の水槽などでカクレクマノミを見たとき、ぜひグループ内の大きさの違いに注目してください。あの一番大きなのがメス、ちっちゃいのは全部オスでもメスでもない…。そんな秘密がわかると、カクレクマノミのことがもっと好きになるかもしれませんね。

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Writer紹介

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田中 浩之

編集工房リテラ代表。高知県在住。足摺岬近くの海で泳ぎと潜りを覚え、磯で海洋生物に親しむ。坂本龍馬が泳いだ鏡川で渓流釣りをし、段々畑で畑仕事も行う自然派ライター。生物や歴史、園芸関係などの書籍を多数編集執筆。観光ガイドブック、行政の広報誌などの編集も行う。