2017年06月26日 ジンベエザメ
300匹の赤ちゃんを産む!? ジンベエザメ繁殖の不思議

卵を産むのは生存競争で不利?
ユーモラスな姿で人気の魚・マンボウは、一度に約3億個もの卵を産みます。
マンボウは巣を作ったり、親が卵を守るような行動をとらず、海の中へ文字通りばらまくように産卵するのです。
散らばった卵は他の魚にとって格好のエサ。
マンボウの卵は次々と食べられてしまいます。そのため、3億もの卵から親魚まで成長できるものは、わずか数匹といわれているのです。
マンボウのようにとほうもない数の卵を産む魚に対し、赤ちゃんを産む魚もいます。
哺乳類ではありませんから、正確にいえばメスの体内で卵をふ化させて、稚魚として産み落とすスタイル。
これを「卵胎生(らんたいせい)」と呼びます。
飼いやすい入門者向きの熱帯魚として知られるプラティは卵胎生。
アクアショップでプラティを購入し自宅の水槽に放したら、翌朝には稚魚が泳いでいるなんてことも。
「卵も産んでないのに赤ちゃんがいる!」と初心者アクアリストを驚かせます。
稚魚の状態まで育ててから産む卵胎生には大きなメリットがあります。
- 無防備で捕食されやすい卵の期間を、安全な母親の体内で過ごせること。
- 産まれた時にはもう自力でエサをとる能力を持っているので、生存率がより高まること。
他種の卵より生存競争で圧倒的に優位に立てますね。
一方、メスのお腹の中はスペースが限られているので、たくさんの稚魚を同時に育てることはできません。
稚魚の状態で少なく産んで生存率を高めるか、とにかく卵の数で勝負するか?
魚たちはそれぞれに策を凝らしているのです。
ジンベエザメは数でもすごい!
卵で産むか、赤ちゃんで産むか? ジンベエザメは後者のスタイルを選びました。
大きな個体では全長12mを超えるジンベエザメだけに、赤ちゃんのサイズもビッグ。
稚魚は約50~60cmもあります。
これはブラックバスの大物と同サイズ。
といっても、生まれたてのジンベエザメが本当に50~60cmなのか確証はありません。
もっと大きく育ってから産まれている可能性もあります。
実は、1995年に台湾でメスのジンベエザメの体内から稚魚が見つかり、卵胎生であることが判明したものの、これ以外の発見例はないのです。
そのため、最終的に何cmまで成長してから産み落とされるのか、お腹の中で育つ期間はどれくらいか、そもそもどんな繁殖行動をしているのかさえ分かっていないのが現状なのです。
約300匹という数にも謎が残ります。
卵胎生は少なく産む代わりに生存率を高める戦略。それなのにジンベエザメは数も多いのです。
大きなジンベエザメですが、さすがに300匹もの赤ちゃんをお腹の中で育てるのは大変。
出産は数年に一度程度と考えられています。
また、生まれてから出産できる状態に成熟するまで30年もかかるともいわれています。
成長の遅さと繁殖スパンの長さが、「たくさん産む卵胎生」というジンベエザメ独特のスタイルにつながったのかもしれません。
まだまだ謎の多いジンベエザメ。
実際に見に行ったときには、ジンベエザメの不思議について思いを馳せてみてはいかがでしょう。
夏休みの自由研究の対象として、ジンベエザメについて調べてみてもおもしろいかもしれませんね。