2017年07月13日 ジンベエザメ
驚きのメカニズム! ジンベエザメの目、口、鼻、耳、エラの秘密

サメにしかない特殊なレーダーで隠れた獲物を探す
サメは嗅覚に頼ってエサを探すため、視力はそれほど高くないというのが近年までの通説でした。
しかし研究が進むにつれ、サメには優れた視覚が備わっていると明らかになりました。
サメの目があやしく白く輝いている画像を見たことがあるかもしれません。
これは、目が発光しているわけではなく、内部にある「タペーダム」という構造のせい。
タペーダムは暗いところで視力を高める役割があります。
ちなみに猫の目が光るのもタペーダムのおかげです。
サメたちは聴力も優秀。
私たち人間のように外側から見える耳を持っていませんが、頭蓋骨の中にある「内耳(ないじ)」で小さな音も聞き逃しません。
また、鼻の付近にはわずかな電磁波をとらえる「ロレンチーニ瓶」というレーダーのような器官が発達しています。
サメの仲間だけが備えているロレンチーニ瓶ですが、とらえることのできる範囲はわずか数十センチ。
遠くの獲物を察知するのではなく、砂の中に潜んでいる魚を感知するために使われていると考えられています。
鋭い牙だけじゃない、さまざまなサメの歯
サメの歯と聞いて真っ先に連想するのは、ホホジロザメ(ホオジロザメ)に代表される、いかにも獰猛そうな鋭い牙状の歯ではないでしょうか?
映画『ジョーズ』のイメージだけでなく、牙のような歯を使ったアクセサリーも販売されているので、最も私たちになじみのある存在です。
しかし、サメはとがった鋭い歯の持ち主ばかりではありません。
ホホジロザメのように大きな獲物を切り裂くようにして食べるサメは一部の存在にすぎないからです。
例えば、ネコザメの仲間は硬い殻を持つ貝やカニをすりつぶすように食べるため、私たちの奥歯(臼歯)のように平らな歯がいくつも連なっているのです。
ジンベエザメの歯はとても小さく、マッチ棒の頭ほどのものがびっしりと並んでいます。
ジンベエザメはオキアミなどプランクトンが主食であるため、大きく鋭い歯は必要ないのです。
ちなみに海水ごとエサを丸飲みするため、歯自体をほとんど使うことがありません。
エラは呼吸のためにあるんじゃない!?
海水を吸い込みやすいようにジンベエザメの口は身体の真正面にひらいています。
一方、ホホジロザメなど肉食のサメは、獲物の臭いをとらえやすいよう鼻がまず身体の先端近くにつき、その後ろに口があるのです。
突き出た鼻が食事の時にじゃまにならないよう、多くのサメは上あごが突き出せるようになっています。
ジンベエザメやメガマウスの食事方法はとてもダイナミック。
いちいちエサを探すようなことをせず、口の中に海水ごと取り込んでしまうのですジンベエザメは口を横に細長く開き、スポイトのように海水を一気に吸い込みます。
ですが、同じプランクトン食のメガマウスは口を縦に大きく開け、海水をかたまりのように口に含んでからエサを濾し取るのです。
肝心のエサは、エラについている「鰓板(らいばん)」という、一種のこし器を使って濾し取ります。
不要な海水はこの時、エラ穴から吐き出してしまいます。
ジンベエザメをはじめ、ほとんどのサメは5つのエラ穴を持っています。
ジンベエザメの属するテンジクザメ目の仲間は、多くが一番後方にある5番目のエラ穴をエサ取り専用に使っています。
本来、呼吸をするためのエラが食事用になっているんですね。
5番目のエラ穴がエサ用になっているのには、ちゃんと理由があります。
テンジクザメの仲間は海底の砂と海水をまとめて吸い込んでエサ取りします。
この時、尖った貝がらや小石で大切なエラを傷つけてしまわないよう、呼吸用とエサ用にエラ穴を分けているのです。
ジンベエザメはじめ多くのサメは、エラ穴が5つで背びれを複数持っています。
しかし、エドアブラザメ、エビスザメなど7つのエラ穴を持つ一部のサメには、背びれが1つしかありません。
エラ穴と背びれ、一見無関係に思える両者に何らかの相関があるのか? 今後の研究が待たれています。
ジンベエザメを実際に見たときには、これらの特徴を思い出して、じっくりと観察してみてください。
それでは、よい旅を!