2017年08月10日 海の生き物
あれ? 埋まっちゃった…チンアナゴの不思議な生態に迫る

チンアナゴの基本情報
チンアナゴは体長30㎝ほどのアナゴ科の海水魚。
チンアナゴという変わった名前が付けられた理由は、顔が犬の狆(ちん)に似ているからだそうです。
ちなみに英語では、Spotted Garden Eelと呼ばれます。
Spottedはチンアナゴの体にある黒い斑点のこと、Eelはアナゴという意味です。では、なぜ「庭」という意味のGardenが名前についているのでしょうか
画像を見てもらうとわかりますが、チンアナゴは海底に埋まっています。
少し見方を変えると、海底から植物が生えているように見えませんか?
植物が生えるのは「庭」、つまりGardenですよね。
海底に生える植物のようなチンアナゴは、海の流れに逆らわないように体をゆらゆらと揺らしています。
実は体を揺らしているにはある理由があるのですが、それは後ほど紹介しましょう。
チンアナゴは不思議な生物ですが、非常に可愛らしいです。
その愛らしいルックスと不思議な生態ゆえに多くの水族館で飼育されています。
チンアナゴはどうやって砂の中に埋まるの?
海の砂の中に埋まっているチンアナゴですが、誰かに埋められたというわけではないので心配しないでください。
自分から砂の中に埋まっていったのです。
まず知っておいてほしいのが、チンアナゴにとって砂を掘るのは大仕事だということ。
砂を掘るときは、全身の筋肉を使うので体が固くなります。
まずチンアナゴは尻尾を使って穴を掘ります。
チンアナゴの体はいくつもの層でできているので丈夫です。そのため、砂を掘っている最中に体が傷つくことはありません。
十分な深さまで穴を掘ることができたら、チンアナゴは体を穴の中に入れます。
でも、これで完成ではありません。しっかりと体を穴の中に固定しないといけませんから。
だから、チンアナゴは体からセメントのような物質を出すんです。
これで穴の中に住んでも倒れることはありません。
チンアナゴがゆらゆらと揺れている理由
チンアナゴは群れで住むことがほとんどです。
一匹で住んでいることはほとんどありません。
チンアナゴの群れを見てみるとわかりますが、ほとんどすべてのチンアナゴが同じ方向を向いています。
これはチンアナゴのエサの食べ方に秘密があります。
チンアナゴの主なエサは動物プランクトンです。
チンアナゴはただゆらゆらと揺れているのではありません。
実はエサを食べているのです。動物プランクトンは潮の流れに乗ってやってきます。
エサを目で確認して、1つずつエサを食べます。
その姿が揺れているように見えるのですね。
また潮の流れは1つの方向に決まっています。
右からも、左からも流れてくるということはありません。
右からなら右からだけ、左からなら左からだけ、だからチンアナゴたちは同じ方向を向いているのですね。
チンアナゴはじっくりと観察するのが最高の楽しみ方
一見すると、ゆらゆら揺れているだけの可愛らしいけどちょっと退屈なチンアナゴですが、最高の楽しみ方はじっくりと観察することです。
チンアナゴたちは表情がとっても豊か!
遠目からは確認しづらいですが、近くでみるとさまざまな表情をしたチンアナゴたちを見ることができるはずですよ。
また、たくさんいるチンアナゴの中で姿勢が低くなっているものが2匹以上いたら注目してください。
チンアナゴたちがケンカしている可能性があります。
穏やかに見えるチンアナゴですが、意外とケンカが多いんです。
ケンカしているときの表情はもちろん怒った表情ですよね。
さらに、運が良ければ穴から出てきているチンアナゴの姿を見ることができるかもしれません。
チンアナゴは穴から出てくることがほとんどありません。
基本的に穴の中が大好きなチンアナゴなので、いったん外に出てきても、すぐにまた穴を掘って中に入り込む可能性が高いです。
つまり、チンアナゴが穴を掘る姿を見る大チャンスだということ。
チンアナゴはじっくりと観察すればさまざまな表情や姿を見せてくれる動物です。
水族館でチンアナゴを見る機会があれば、時間をかけてゆっくりと観察することをおすすめします。
沖縄の海で野生のチンアナゴが見れるかも
チンアナゴは沖縄のあたたかい海に生息します。
運が良ければ、沖縄の海で野生のチンアナゴを見ることができるかもしれません。
特にサンゴ礁の砂底に生息することが多いです。
サンゴ礁付近は潮の流れが強いという特徴があります。
つまり、チンアナゴのエサであるプランクトンが次から次へとやってくるということです。
あたたかくてサンゴ礁が豊富にある沖縄の海はチンアナゴにとって住みやすい環境なんです。
少し変で、だけどとっても可愛らしいチンアナゴをぜひ見てみてください。
それでは、よい旅を!