2017年09月04日

ジンベエザメを車で運ぶ方法教えます

大きな個体では10mを超す世界最大の魚類に数えられるジンベエザメ。では、もし車を使って陸路で生きたジンベエザメを運ぶとしたら、どんな風にすればよいでしょうか? これは、とんちではなく本当にあった出来事です。ジンベエザメ輸送のプロセス、必要な機材と量、意外なテクニックなど、高知から大阪まで運んだ実際のケースをもとにくわしくご紹介します。

 

もしジンベエザメが網にかかったら?

ジンベエザメは、餌となるプランクトンを求めて世界中を回遊すると言われています。

プランクトンのよく発生する水深10m付近が主な遊泳エリア。

時にはなぜか餌の乏しい水深700mの深海まで急潜航することもあります。

 

そんな自由気ままな泳ぎを見せるジンベエザメですが、まれに定置網の中に迷い込んでしまうことも。

高知県沖はジンベエザメが定置網に迷い込むケースの目立つ場所です。
 
ジンベエザメはまだまだ謎の多い生き物なので、こうした場合、まず魚体の安全を確保した上で観察や飼育などの手段が検討されます。

 

たとえば、
 

  • 海上の一定期間、生け簀で飼育・観察した後に放流するケース
  • 研究機関で飼育してからGPSを付けて海に放す事例
  • 水族館の新しい仲間として迎え入れるケース

 
など、その時々に合わせて、定置網にかかってしまったジンベエザメの対応を決めます。

 

いずれにしても、まずはジンベエザメを網から外して、安全な場所へ移送するのが先決。
 
数隻の漁船で大きな囲いを作ってジンベエザメを保護し、港に近い生け簀(いけす)へと移送します。

生け簀でそのまま様子を見る場合もあれば、近隣の研究施設へ一度運び入れることもあります。

 

ここで登場するのが全長5mを超える生魚専用のコンテナ水槽。

まず、ジンベエザメを担架のような布製の枠に移してから、クレーンで陸上のコンテナ水槽へ運び上げます。

水槽ごと海に入れて、漁師や研究員が中に追い込むこともあります。
 
 

餌の合図がふれあいの第一歩

大阪の、ある水族館では高知から運ばれてきたジンベエザメたちが元気に泳いでいます。

かつては貨物船で大阪まで運んでいましたが、時間がかかるためジンベエザメのストレスが大きく、波が荒れ水温の下がる冬場は移送できないことがありました(ジンベエザメに適した水温は20~23度)。

 

近年、トラックにコンテナ水槽とエアーを送り込む発電機を同時に載せる手法が普及したことで、ジンベエザメ輸送がスピードアップしています。

たとえば、高知から大阪なら約13時間で運ぶことができます。
 
生け簀や研究施設へ一時的に運び込まれたジンベエザメは、まず人間から餌を与えられることを学びます。

 

飼育員がひしゃくで水面を叩くと餌やりの合図。

餌は栄養剤を混ぜたオキアミです。

 

ジンベエザメが餌を食べ始めるようになったら、飼育員が一緒に泳いで身体をタッチ。

人間と触れ合うことを学ばせていきます。

 

こうして人に慣れたところで、いよいよ水族館への長距離移動が可能になります。

移動の3日前になると餌やりを一時ストップします。

これは移動中、フンで水を汚さないための対策です。ジンベエザメをはじめ魚類は絶食に強いので、3日程度なら餌がなくても平気なのです。
 
 

深夜に行われる長距離輸送

その水族館がジンベエザメ輸送に使っているのは、縦5.7m、横2.2m、深さ1.1mのコンテナ水槽と専用トラックです。

さらに、夜間作業用の照明を備えた資材車、交換用の海水を入れた活魚車(魚を生きたまま運ぶ専用のトラック)2台が同行します。
 
スタッフの数は18名に及んだといいます。

 

活魚車には目的地である水族館の飼育水を詰めています。

到着後、少しでも早くジンベエザメを馴染ませるための工夫なのです。

 

移動は交通量の少ない夜間。

まず港でも使った担架状の台へ、ジンベエザメを優しく追い込んでコンテナ水槽へ移動させます。
 
水槽に入れたら、感染症を防ぐための予防注射と採血を行います。

注射するのはウエットスーツに身を包んだ獣医。自分も水槽の中に入って作業します。

 

ジンベエザメにとって海水は、私たちにおける空気と同じ。

道中、トラックを止めて水替えをし、少しでも新鮮な海水を与えてあげるのです。

換水の際にも採血し、ジンベエザメの健康状態をチェックします。

 

高知から約13時間の旅を終え新天地である大阪の水族館へ到着。

クレーンでコンテナ水槽をトラックから降ろし、館内へと運びます。
 
コンテナ水槽から飼育水槽へ移す時が、一同の最も緊張する瞬間です。

ジンベエザメがゆっくりと泳ぎ始めると安堵のため息が漏れます。

皆さんが水族館で目にするジンベエザメは、多くのスタッフの努力と、大がかりな設備によって運び込まれたものなのです。
 
ジンベエザメの運び方に思いを馳せながら眺めて見ると、また違った感慨がわいてくるかもしれません。

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Writer紹介

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「こんにちは!ジンベエさん」編集部

ジンベエザメや沖縄の海のこと、ジンベエジェットなどの情報をみなさんに届けるために日々奮闘中。