2017年11月29日 海の生き物
シャチやクジラのおしゃべりを聴いてみよう

クジラやイルカのように鳴き声で会話したり、「海面上に尾をふり上げて打ち付ける」といったボディランゲージで意思疎通をしたりすることもあります。
また、「ポッド」と呼ばれる数世代にわたる大家族を作って暮らすのもシャチの特徴です。
シャチやクジラは普段、どんなメッセージのやりとりをしているのでしょうか? 彼らの会話に耳をすませてみましょう。
シャチやクジラはなぜ「言葉」を覚えたか?
寒い海をすみかとしているシャチは、大きく2つのグループに分けることができます。
ひとつは特定の地域に定住して主に魚を捕食して暮らすグループ(「レジデント」と呼びます)。
もうひとつは世界中を回遊し、アザラシなやクジラなど大きな獲物を狩るグループです(「トランジエント」と呼ばれています)。
寒い海がすみかと書きましたが、後者の遊泳範囲はとても広く、時には赤道付近の海にまで進出することがあります。
シャチ特有の白黒模様は、レジデントとトランジエントでは微妙に異なります。
しかし、「ポッド」と呼ばれる血縁関係で結ばれた群れを形成する点は同じです。
ポッドは若いシャチから老成個体まで3~4世代で構成され、群の数は40頭程度に及びます。
イワシなどの小魚は身を守る目的で群れを作りますが、シャチのポッドは狩りのために存在します。
レジデント、トランジエントに関わらず、狩りの時は追い込み役、捕獲役といった役割分担ができているのです。
どの個体がどんな役目を果たすべきなのか、次の世代に狩りのテクニックをいかに伝えるのか。
こうした必要性から、シャチは鳴き声やボディランゲージによるコミュニケーション術を磨いていったのです。
シャチのボディランゲージを覚えよう
それでは、シャチが見せる代表的なボディランゲージをご紹介しましょう。
・尾びれたたき
尾びれを海面に叩きつけます。一頭が尾びれたたきを行うと、群れ全体が進行方向を変えるといった動きを見せます。方向転換などさまざまな合図に用いられていると考えられます。
獲物の四方を分担して囲む「シャチの弁当持ち」、尾びれをいっせいに振って波を起こし流氷上の獲物を落とす「オルカ・アタック」などに役立ちます。
・胸びれたたき
胸びれで海面を叩きます。尾びれたたき同様、合図に用いられるほか、遊びとしても行っているようです。
・下半身投げ
尾びれを振り回し、下半身を海面から大きく投げ上げる動きです。威嚇として用いられます。
下半身投げの一環として、仕留めた獲物を尾びれで空中に放り上げる行為も見せます。
ひん死の獲物をなぶっているようで残酷にも見えますが、子シャチに狩りの方法を教えているのではと考えられています。
鳴き声によるコミュニケーション
シャチやイルカ、クジラの仲間は鳴き声によるコミュニケーションも得意としています。
海中では空中より速く音波が届きますし、透明度の高い海ばかりではないので視覚より聴覚の方が有利になってくるのです。
中でもシャチは鳴き声の「ボキャブラリー」がとても豊富。強さだけでなく、知能の高さも証明しているのです。
シャチの鳴き声はポッド(群れ)によって方言のような違いがあります。
シャチの赤ちゃんは生まれてすぐに鳴き声を出せるわけではありません。
母シャチやポッドの仲間たちから少しずつ「言葉」を教わり、数年がかりで身につけていくのです。
シャチは決してポッドの中で新たな婚姻関係を結びません。
他の群れのシャチと結ばれることによって新たな鳴き声のバリエーションを習得します。
こうしてシャチの言葉はより深く、複雑化していくのです。