2017年05月08日 海の生き物
海の英雄・ナポレオンフィッシュに会いに行こう!

飼っているとニートになる魚?
分厚い唇がどことなくユーモラスなナポレオンフィッシュは、暖かいサンゴ礁の海に生息する大型魚。ブルーとイエローを中心に複雑な変化を見せる体は最大2m以上、190kg近くまで成長します。国内では沖縄列島と和歌山でしか見ることができません。
眼の後ろからメガネのつるのように見える黒い筋が伸びていることから、和名は「メガネモチノウオ(眼鏡持ちの魚)」。
沖縄の言葉では「ヒロサー」。
宮古島周辺では「ヒロシー」とも呼ばれています。
ナポレオンの軍帽にたとえられた大きなコブができるのは老成したオスだけ。
生まれた時のナポレオンフィッシュはすべてメスで、成長とともに一部の個体がオスへと変化するのです。いつ頃、どんなきっかけでオスに性転換するのかはよく分かっていません。
ちなみにサンゴ礁の人気者・カクレクマノミも、こうした性転換を行う魚です。
大きく成長するだけありナポレオンフィッシュはとても食いしん坊。
トゲのあるウニや毒のあるオニヒトデ、アメフラシも平気で食べてしまいます。
人間のように眠る時のオンオフがはっきりしているのもナポレオンフィッシュのユニークなところ。
夜になるとサンゴの隙間や岩の下に体を横たえて眠ります。水族館など飼育下の個体は、餌の時間帯以外はずっとごろ寝していることも。
ダイビングでナポレオンフィッシュに出会う
ナポレオンフィッシュの寿命はとても長く、30才を越す個体も。
一度すみかを決めるとその場所に定住するのが特徴。そのためダイバーにたちとっては、そのスポットに潜ればいつでも会える友達的存在なのです。
沖縄では石垣島、慶良間諸島など幅広いエリアでナポレオンフィッシュに出会うことができます。
本島なら残波岬や真栄田岬が好ポイントです。
各マリンショップがナポレオンフィッシュや海の仲間と触れ合えるダイビングツアーを企画しているので、ぜひチェックしてみてください。
手で触れられるほど人慣れするナポレオンフィッシュですが、すぐにサッと泳ぎ去ってしまう臆病な個体も。一匹々々に個性があるのです。
ナポレオンフィッシュは美ら海水族館の人気者ですし、ショッピングモールで飼育されていることも。ふとした買い物で思いがけずナポレオンフィッシュに出会えるかもしれませんね。
レアなナポレオンフィッシュのお味は?
乱獲やサンゴ礁の破壊によって生息数が激減。
レッドリストにも載せられている絶滅危惧種のナポレオンフィッシュですが、近年では養殖の取り組みも行われています。
数は少ないものの、沖縄では食用魚として市場に出回ることも。チャンスに恵まれたらぜひナポレオンフィッシュを味わってみてください。
お刺身や皮を残して表面だけさっと熱を通した皮霜(かわしも)造りでいただきます。
透明感のある身はクセがなく、淡白すぎるほど淡白。それを補ってくれるのが旨味と歯ごたえたっぷりな皮。
ぜひ皮つきで味わってください。ムニエルや天ぷら、から揚げにしてもいけますよ。味噌を溶いたアラ汁もおすすめです。
大きな個体ではこぶしサイズにもなるウロコは、キラキラとした光沢を帯びています。
地元の漁師さんはこれを昔からカツオ釣りの疑似餌として用いてきました。よく光るウロコを小魚と間違えてカツオが食いつくことを先人は発見していたのですね。
触れ合う、食べる、道具として利用する‐。
沖縄とナポレオンフィッシュは切っても切り離せない関係にあるのです。